日日- HiBi - Day-to-Day
酸いも甘いも―。
日々を彩るものは様々だ。
天候、体調、気分にだって左右される。それ
らを乗り越え365日「野良猫の餌やり」を続ける
奇跡のようなご夫婦がいる。人生の大先輩。
20年間? 毎日? 雨ノ日モ風ノ日モ?
つい、質問攻めにしてしまった。
許可を得たお宅の庭先にエサを置き、
何軒も回っては、猫たちが食べ終わるまでを見
守る。その後をきちんと綺麗に掃除して、よう
やくその1日のミッションが完了となる。
「じつは、そうじが一番大事なんだよね」
普段は冗談ばかり言う先輩の、落ち着いた声。
想像すれば、ただの1日だけでも大変な労力。
根底に、信念としての「愛」が無ければ、三日
坊主にさえ満たないだろう。
久々の再会で、先輩と食事をした帰り際、
「妻と、猫のご飯やりに行かなくちゃならない
から」と。どこかはにかんだような笑顔で、あ
くまでも飄々として。
先輩夫婦は、世界中の猫に格別の愛を注ぐが、
勿論すべての人間にだって優しい、温かい。
お二人の仲睦まじさの秘訣は、根っこから溢
れ出る愛情、それを惜しみなく他人や猫にも注
ぐ心の豊さ。憧れの夫婦のカタチがここに在る。
書家/石崎 甘雨