福祉用具の活用事例Examples of welfare equipment utilization
株式会社アイセイ薬局
在宅推進部 課長
五来大児氏
在宅医療に寄り添う「かかりつけ薬剤師」
服薬支援装置で独居老人や老々介護の
飲み忘れや飲み間違いを防止
日本は急速に高齢化が進み、老々介護や独居老人も多くなってきた。医療や介護の現場では新たな課題が生まれ、とりわけ在宅医療における薬の服用管理は、患者の健康状態に直結するとして問題視されている。このような中、東京都千代田区に本社を構える株式会社アイセイ薬局は、在宅医療の向上を目指し、「服薬支援装置」の導入を進めている。全国に約410店舗を展開する大手チェーンであり、在宅医療を強化する同社の先進的な取り組みについて紹介したい。
かかりつけ薬剤師の重要性
アイセイ薬局は、患者様一人ひとりに寄り添う医療サービスを提供している「地域密着型」の薬局チェーンである。医療や介護が必要な高齢者が増加する中で、同社の在宅推進部五来大児氏は「薬局の仕事は単に薬を調剤して渡すだけではありません。患者様の生活全体を支えることが私たちの使命です」と強調する。
高齢者が自宅で安心して生活を送るためには、医療と介護の連携が不可欠であり、その中でも「かかりつけ薬剤師」の存在は極めて重要となる。かかりつけ薬剤師は、患者様の健康を包括的に支える役割を担っている。患者様やその家族に対して、薬の正しい飲み方や効果、副作用について分かりやすく説明するのはもちろん、患者が複数の医療機関で処方された薬を一元的に管理し、飲み合わせの悪い薬や重複処方を防ぐ役割がある。医師や看護師、ケアマネジャーなどと密に連絡を取り合い、患者の健康状態や治療方針を共有しなければならない。
薬の管理や服薬指導の課題
薬剤師が患者様の自宅を訪問し、薬の管理や服薬の支援・服薬指導を行うサービスを展開しているが、訪問回数には限りがある。こうした中、薬の飲み忘れや飲み間違いが大きな問題として浮上している。医師の処方に基づいて薬が出されても、患者が適切に服用しなければ治療の効果は得られない。また、薬の誤用は健康被害を引き起こすリスクをともなう。
「薬を適切に服用することは、患者様の健康を守る最も基本的なことです。しかし、多くの患者様にとって、それが難しい現実があります」(五来氏)。特に認知症や視覚障害を持つ患者様、あるいは複数の薬を服用しなければならない患者にとっては、薬の管理は大きな負担となる。家族が遠方に住んでいる場合や、老々介護の家庭では、薬の管理が行き届かないことも多い。
患者様が薬を正しく服用できるよう支援する仕組みの必要性が高まる中、同社の導入したのがフランスベッドの提供する「服薬支援装置」であった。
9日分の薬をセットできる服薬支援装置
アイセイ薬局の在宅推進部では、独居高齢者や老々介護の家庭を訪問する中で、患者が薬を飲み忘れるケースや、間違えて服用してしまうケースを頻繁に目の当たりにしていた。「月に数回の訪問だけでは、患者様の日常的な服薬行動を完全にサポートするのは難しい」と五来氏は振り返る。
こうした課題を解決するために検討されたのが服薬支援装置だった。服薬支援装置は患者が薬を正しいタイミングで服用するよう促し、薬剤師が訪問できない時間帯にも支援が可能になる。アイセイ薬局では、複数のメーカーが提供する装置を比較検討し、最適な製品を求めた。
「私たちが選んだ装置は、9日分の薬をセットできることや、停電時にも乾電池で動作することが大きな決め手でした。また、音声案内や光、音楽を使って薬を服用する時間を知らせる機能も患者様にとって非常に親しみやすいと感じました」と五来氏は説明する。
服薬支援装置の具体的な機能
フランスベッドがレンタルで取り扱う服薬支援装置は、高齢者の服薬管理を支えるために設計され、主な特徴は次のとおりである。
• 9日分の薬をセット可能:薬剤師の訪問が週1回で済むように設計されており、さらに災害などで訪問が遅れた場合でも追加の2日分がセットでき、安心して利用できる。
• 停電時でも動作可能:普段は、電源ケーブルで稼働するが、乾電池でも動作するため、停電や災害時にも服薬支援が途切れることがない。
• 音声・光・音楽による通知:患者が薬を飲む時間を知らせるために、音声や光、音楽で通知する機能がある。認知症患者や独居高齢者も適切に薬を服用できる。
• 服薬履歴の記録:患者がいつ薬を飲んだかを記録する機能を備えており、医師や薬剤師が治療状況を正確に把握できる。
特に効果が出ているのが、録音機能がある点だ。この機能を活用して、ケアマネジャーや訪問看護師の声を録音し、患者様に呼びかけることで、親しみを感じながら薬を服用できる仕組みとなっている。特に独居高齢者や視覚障害者にとって、この機能は非常に効果的である。
服薬支援装置の事例
以下は、実際の利用者から寄せられた具体的なエピソードである。
事例1:認知症患者の自立した服薬管理
認知症患者Aさんは、薬の飲み忘れや過剰服薬が頻繁に発生し、家族や医療従事者にとって大きな課題となっていた。薬剤師が週に1回訪問し、薬のセットや服薬指導を行っていたが、訪問以外の時間帯での管理が困難だった。そこで、服薬支援装置の導入が提案された。
装置が導入されると、音声案内と光の誘導機能がAさんの行動をサポートし、薬を正確な時間に服用する習慣が身についた。導入から3週間後には、Aさんは装置の前で薬が出てくるのを待つようになり、自発的に服薬できるようになった。装置の記録機能により、家族や医療従事者もAさんの服薬状況を把握でき、治療計画の調整が可能となった。
事例2:老々介護家庭の負担軽減
老々介護に取り組むBさん夫妻は、夫が複数の薬を服用する必要があり、妻がその管理を担っていた。しかし、妻自身も体調を崩しがちで、薬の管理が大きな負担となっていた。
服薬支援装置を導入したことで、妻の負担が大幅に軽減された。装置が自動的に薬を分配し、夫に音声で服薬を促すことで、妻は自分の体調管理に集中できるようになった。「装置を導入してからは、夫の薬を心配することなく、他の家事や自分の健康に時間を使えるようになりました」と妻は語る。
事例3:視覚障害者が安心して暮らせる仕組み
Cさんは、視覚障害を持つ独り暮らしの患者様で、以前は薬の袋を手探りで探しながら服用していた。これにより、時折飲み間違いや飲み忘れが発生し、医師や薬剤師が対応を求められることもあった。
服薬支援装置の導入により、Cさんは音声案内を頼りに薬を服用することができるようになった。装置が薬を適切に分配し、飲む時間を知らせてくれるため、視覚に頼らずに安心して服薬を続けられるようになった。「自分で薬を管理できることが増え、生活に自信が持てるようになりました」とCさんは語る。
家族にとっても大きな安心材料
服薬支援装置の導入は、患者やその家族、さらには医療従事者に多くのメリットをもたらしている。まず、患者様が薬を正確なタイミングで服用できるようになり、治療の効果を最大限に引き出すことが可能となった。従来は、薬を飲み忘れることで治療が遅れたり、誤った服薬による副作用が問題となるケースが多かったが、装置の利用によってそのリスクが大幅に低減された。
また、服薬履歴が記録されるため、医師や薬剤師は患者がいつ薬を飲んだかを正確に把握できる。このデータは治療方針の見直しや調整に活用され、より適切な医療提供が実現している。さらに、薬剤師の訪問回数を最小限に抑え、効率的な医療資源の活用に寄与している。
家族にとっても、装置の導入は大きな安心材料となっている。特に遠方に住む家族にとって、患者様が薬を適切に服用しているかを装置が管理してくれることで、離れていても安心感を得られる。薬剤師や訪問看護師との連携が強化されることで、患者の生活を支える仕組みが整っている。
さらなる進化の期待
服薬支援装置は、現在の機能だけでなく、さらなる進化が期待されている。その一つが見守り機能の強化である。現在、患者様が薬を取り出したかどうかを記録する仕組みはあるが、これをリアルタイムで医師や薬剤師と共有できる技術が今後は求められてくる。特に独居高齢者の場合、服薬状況を即座に確認できることで、万が一の事態に迅速に対応することが可能になる。
また、インターネット環境が整っていない家庭でも利用可能な通信システムの導入も重要だ。高齢者の多くはインターネット環境が整備されていない家庭も多く、そのため、通信環境の導入や通信機能を補完する商品の技術革新が期待されている。
「私たちは、患者様一人ひとりの生活環境を配慮し、より多くの方々が安心して暮らせる環境を作っていきたい。できる限り多くの方に服薬支援装置の存在を知っていただきたい」と五来氏は呼びかける。
連絡先
株式会社アイセイ薬局
URL:https://aisei.co.jp/