日日- HiBi - Day-to-Day
こころの、表現―。
人生のティータイム。仕事の一段落のタイミ
ングでやたらに訪れたくなる家がある。その住
人は、料理やお花等の講師をしているY姉さん。
アロマや手料理の香りに迎えられ、ベランダ
には花々やハーブが心地よさげに揺れている。
「紅くるりのグリル」には自家製の桜塩を。繊
細な風味に彩られ、美味しさは言わずもがな。
事前に私の大豆アレルギーを知って、彼女が
手づくりしてくれていたのは「あずき味噌」。
―甘雨ちゃん、お味噌食べたいかなぁって。
「豚肩ロースのロースト」につけて食した。
小豆の風味もきちんと残りつつ、それは確か
に味噌だった。この数年、味噌と名のつくもの
を避けてきた体にはふるえるほどの歓びだった。
―ああ、私はこの味が恋しかったんだ。
彼女の仕事は多岐にわたるが、全てに共通す
るのは、おもてなし。誰かを想って伝える心の
表現。このあずき味噌はその最高峰ではないか。
無添加どころかイーストさえ使わないという
「あんぱん」と先ほどの「あずき味噌」をお土
産にいただいた。アレルギーの悲しみさえも愉
しみに変換してしまえと言われた気がした。そ
れこそが彼女の生き方なのだろう。私がまたこ
の家に帰りたくなるワケはここにある。
書家/石崎 甘雨